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苦労性の画家と、方向性を間違えたアーティストのお話

これから当分やつれます。宝くじあたるまで。

みたいな。

かわいそうな自称美少年、佐藤です。こんばんは。



「時空警察調査団」第1章18節(修正版)うp http://khronos394.blog115.fc2.com/blog-entry-280.html

修正分はこれでおしまい。次回から新作?です。






お箸折れた。今折れた。
神代杉のお箸ーっ!!ショックのうちひしがれながら、診断メーカーで出たお題で書いてみようと思う。


「 ねーkhronos442、苦労性の画家と方向性を間違ったアーティストが世界の楽しさ、哀しさ、愛しさを知る話書いてー。 http://shindanmaker.com/151526 」



「何号で描こうと、そう、どんな大きさだろうと構わないんだ。人の心は無限大だからね、キャンパスに収まるわけがない」
 男が言う。
 月明かりに照らされた部屋。床板がきしんだ音を立てる。
 イーゼルに立てかけたキャンバスには完成間近の風景画が描かれていた。
「君が目指しているものはなんだい? 有名になることかい? 人にチヤホヤされること? それとも金かな」
 筆を洗ってテーブルに置く。今夜の作業はこれで終わりらしい。
 部屋の隅で小さくなっている男に、画家は話しかけた。
「君がなりたかったものはなんだい?」


「答えが出るまで、ここにいていいよ。飲み物でもどうだい。僕は一杯やるつもりだ。妹たちにちょっとした事件があってね。忘れたいんだ」

 画家は棚からグラスを2つ取り出し、氷を放り込んだ。

 琥珀色に染まったグラスが月の光を反射した。


「僕の仕事は世界の一部を永遠に閉じ込めることだ。それはとても残酷なことだね。時は止まることがないのに、キャンバスの中で時は進まない。笑顔は永遠に笑顔のまま。悲しみを閉じ込めたならそれも永遠。因果な商売だ。芸術家って高尚なもんじゃない。残酷さを見えない布で覆っている、そんなもんだ」


 男は手にしたグラスをぼんやり見つめて口を開いた。


「じゃあ君はなんでそんな残酷な仕事を選んだんだ?」


 画家は窓の外に目を遣った。月が明るすぎる。薄い雲がかかればいい色になるのだが。


「さあね。勝手に体が動いたからかな。描くのは僕の本能だったからだろうね。幸い欠片ほどの才能があったため成功しただけさ。社会的地位においてだけだが」
「それは人として成功したのも同然じゃないか。俺なんて」
「君にも欠片ほどの才能はあるんじゃないか」
「そうだろうか」
「誰にでも一欠片程度の才能はあるものさ。ほとんどの場合」


 氷がグラスの中でチリリンと音を立てた。


「例え一欠片もなかったとしても、情熱と方向があっていれば補えることは多い。大抵の場合、そこを間違えてしまうようだがね。これといった才能がなくとも、成功している画家は結構いるよ。誰でもそこそこできるもんだなあと感心する。
 でも僕は、君にはそれなりに才があるんじゃないかと思っている」
「かいかぶりだね」
「そこで話はもとに戻るが、君が目指しているものはなんだい」


「俺は多分……、内にあるものを外に出したかったんだと思う。その方法が音しかなかった」


「ただがむしゃらに音を奏でていた。内にこもる全てのものを外界へ連れ出したくて。それが人を傷つけるのもかまわず、……気づかず」


「俺の周りから人が消えるまで、ただがむしゃらだった」



 男は座り込んで顔をかくした。



「そうだね。僕も君はただ必死に、まっすぐ音を奏でていたと思う。音は一瞬だ。楽譜に書き残そうとも、録音技術があがろうとも、その場その時の音は一瞬だ。絵とは反対だね」


「人よりもたくさん奏でることが、人を掴む原点だと思っていた。腕が上がり、魅力が引き上げられると。実際結果は出たんだ。だからそれが正解だと信じていた」
「仕事にしてしまえば、人より多くの時間を割いてしまうのは当然じゃないか」
 男は力なく笑った。


「僕が描いている景色は、人物は、心の中にある世界だ。クライアントの意向にそって、現実世界を描いていても同じ事だ。
 見た人が幸せになってもらえるように。つかのま、現実を忘れられるように。
 今は生き難い世の中になってしまっている。
 折れてしまった心にやすらぎを。そう思って描いている。

 僕はそんな絵描きになりたいと思っている。

 まあ妹たちや母親があんなんだからってのもあるかもしれないね。反動でこうなったのかも」



 画家の家族をよく知っている男は、思わず苦笑した。



「彼女が口ずさんていた歌、なんだったっけ」
 画家は鼻歌で静かにうたった。

「よく覚えているね……花の歌だったかな。小さい頃、母親が歌っていたものらしい」
 男の元から姿を消した、素朴な女がいつも歌っていた。
 ずっと彼に寄り添っていたというのに、ある朝、何も継げずに去っていったのだ。

「僕はあの歌が好きだったな。君の作る歌よりもずっと、彼女の歌が」
 …………
「……うん」

 男はグラスを一気に飲み干した。
 後には氷だけが残った。


「歌が上手い女じゃなかった。音楽の事なんてこれっぽっちもわかってなかった。なのに俺の音楽よりも君は彼女の口ずさんだ歌のほうが良かったと言うんだね」
 男の顔、半分が月の灯で青く映った。

「理由は君がよくわかってると思うけどね」
 画家は無造作に置かれていた絵の具を箱にしまった。また明日も使うのだから、そのままにしておけばいいものの一日の終りとして、やはりけじめをつけたいのだ。


「…………」
「君は内にあるものを外に出したい、表現したいって言っていたけれど。
 内にあるもの、それは本当に存在していたものかい?」
「どういうことだ」
「ある、と思い込んでいただけじゃないか。ただの幻想だったんじゃないかい」

 男は眉を寄せた。
 自分の音楽を全否定されたも同然だ。

「世の中がこうだから、こうあらねばならないと思い込んでいたんじゃないかい。それを内に溢れるものだと信じてしまった。君の音楽にはそんな違和感が……異質なものが出てきていたように思う」
「君に音楽の何がわかるというんだ」
「わからないから、わかる。僕と君とのつきあいは長い。
 君だって僕が発表し、絶賛された絵を見て心配してくれたじゃないか。大丈夫かと。実際あの時僕は思いつめていて危ない状態だった。それに気づいてくれたのは絵のことがわからない君一人だった」

「余計な知識がないからこそ、お互いがわかるってことあるだろ」



 画家はキャンパス前の椅子に腰掛けた。


「彼女の歌、僕は好きだったな」


 男は彼女のことを思った。機嫌のいい時にこぼれ出ていたあの歌。

 束の間、幸せだった日々。

 困ったように微笑む姿が愛おしかった。


 あの頃、自分は何を見ていたのだろう。画家の言うとおり、ただの幻をだったのだろうか。


 
 とにかく何かを書かねばならなかった。生み出さねばと思った。
 その想いが見せた、かりそめ。その向こうにあるものは空虚。




「君が生み出したかったもの、なんだい?」


 画家が今一度尋ねた。


 男は空になったグラスを差し出した。


「夜が明けたら、彼女を迎えに行くよ。新しい曲を持って。
 紙と鉛筆、貸してくれるかな」


 そして大きな荷物を下ろしたような、笑顔を見せた。



 傾き始めた月は、銀色の光で街を照らしていた。

 遠い昔から変わることない、冷たく温かい光で。





    <おしまい>




 じゃあまたね。

  佐藤でした。

 




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sugar(佐藤)です。最近お絵かきに目覚めました字書きです。ピクシブ始めました。http://pixiv.me/khronos442_satoh

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