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時空警察調査団第1章18節(修正版)

<前回までのあらすじ>


時空警察調査団に所属するトーマス(仮名)とナップル(仮名)。



トーマス君は招待された若いおねいさんの部屋で水びたしになってしまいました。
供されためずらしいお酒は不思議味。若い男女が深夜にふたりきりなのに、色気もなにもあったもんではありません。
しかし女好きっぽい彼、基本穏やかなので機嫌が悪くなったりはしません。
ポジティブ?なんですかねえ。





 トーマスは美食家ではないし、現在の彼は食事を必要としない。「飲食ができなくもない肉体」であるにすぎない。他の隊員や仕事上のコミュニケーションの一環として通常空間にいた頃のようにふるまっているだけだ。これはナップルは知らない事実の一つである。

 美食家でなく、且つ食事が不必要ということであるため、トーマスは味に無頓着である。この謎の酒を一気飲みすることも可能だろう。それが任務であれば。

 とどのつまり、アオイが提供した酒ってのはぶっちゃけかーなーりキツイ味なのだ。


 申し訳なさげにしているアオイを前に、トーマスはあたりを見回した。今度は視線だけでなく首をめぐらせ、拝見してますとわかるように。
 そして手元に一番近いノート(紙でできたもの)を指した。

「よろし?」
 トーマスが問うと、戸惑いながらもアオイは頷いた。
 パラパラとページをめくる。この星域で一般的に使われている数字と公式の羅列。整然とつづられている引用文、欄外のメモと。きれいな字じゃないか。

 それらに見覚えがあった。いつだったか警察学校の校長が「暇だったら読んでおけ」と押し付けられた数十冊の本の内容と一致する。
 経済学の一種である。星間経済学と名づけられたもので、この宇宙域において100年単位で変化してきた第3思想に準じたものだ。この思想は200年もすれば見事にひっくり返るのであるが、アオイたちにとって寿命を超えた遠い未来の経済活動など思考するにあたらない。流動的にすぎるため、今はないも同じである。


「ジューリィドの学説……」
「ご存知ですの!?」
「まあ一応、修めはしましたから」
 アオイの瞳が輝いた。
「ジューリィドをご存知なんて。しかも修めておられるなんて! 大学の教授でもジューリィドを把握しておられる方は少なくて、それで自分で調べていたのですけど。ああ、こんなところでJ学の方に出会うことができるなんてわたしはなんて幸運なんでしょう。感激です!!」

 両手でトーマスの手を握って振り回す。

「直接ジューリィド博士をお訪ねしようかと思ってたほどなんです。でも仕事を放ってはおけませんし、博士のお住まいはあまりにも遠くて航宙船のコースになくって、シャトル借りようにもわたしは操縦できませんしああもうなんだかもう感激です。本当なんて表現していいのかわたし!」

 立ち上がり、頬に手をあて踊りださんばかりだ。

「ま、彼の言っていることは斬新ではありますが、理解の方向さえあっていればそれほど難解ではないんですよ。合ってますね、これ」
「わたし、ちゃんと理解できていますかしら?」
「ええ。……極めて正確です。たいしたものです、お嬢さんが」
 もう数冊ノートをパラパラめくりつつ感心して言った。
 そのパラ見だけで書かれている内容を把握しているトーマスは何者だ、ということになりそうなものなのだが舞い上がっているアオイは気づかない。

「ここの計算は違っていますけど」

「え」

 トーマスが転がっていたペンを手に取り、書かれていた計算式に手を加えていく。
「ここのシグマートの下辺なんですけどね」
「ああ!」
 ノートとペンの向きをかえてアオイに差し出す。青い髪のメガネっこはかぶりつくようにノートを覗き込んで計算の続きをはじめた。
「そのままでも構わないんですが、三頂点使うといいですよ」
「三?」
「三頂点の定理ってこうじゃないですか」
 アオイからノートとペンをとり、余白につらつらと定理を書く。ペンを渡すときに彼の指がアオイに触れた。

 アオイは胸が高鳴るのを感じた。

 しかし今は教授陣から教えられたなかった高度な学説を、淡々と解説してくれるトーマスの話をきいていたい。未来のために。それが自分に課せられた義務だと思うから。

 この胸の高鳴りを、この気持は認めてはならない。そう言い聞かせた。


「応用っていうか…この3番目の定理のですね、ここ。38.3ペーエムのあとの任意の値ですね。
これとここって合うような気がしません?」
「します。します! え、それなんで?」
「使えるものは使えばいいんです」
「そんなんでいいんですか」「いやだめですけど」「え」
「言ってみただけです」


 びっくりして見つめるアオイにトーマスはにっこり答えた。


「ガチガチになっていたら動けませんよ」
 アオイはしばらくそのまま止まっていたが、やがてしずかに頷いた。
 何度も。何度も。


「ふふーん。実はですね、根本が同じだからです。派生しただけです。正面からぶつかってばかりいては面倒なことも、わき道それて不意打ちすると案外簡単に事が済むこと多いです。人付き合いだろうと、数理だろうと、なんだってね」


 つまりこういうことだといくつか代入して結果を指し示す。

 計算式は余白の部分だけで収まった。元の式での計算は1ページ丸々使用していたというのに。
 アオイは絶句してノートをみつめていた。
 彼女はこのあたりで最高の大学で最高の教授陣に師事し、最高に近い成績で卒業した。という自負が少なからずある。しかし目の前のどこかのほほんとした青年は自分には想像もつかない知恵と知識を持っているように感じられてならない。今まで出会った教授の誰よりも。


「トーマスさん、わたし」
「はい?」
「……経済学が専門でいらっしゃったの?」
「いえ、専門は……物理学でした。ずいぶん昔のことになりますが」


 専門でなくてこれってどういうこと? 自分の価値観がひっくり返された気がする。この人はいったい何者なんだろう。

「いわゆる学問なんてほんとは区分けされるようなものではないんじゃないでしょうか。すべてを知ろうとしても人には限られた時間しか与えられていないから、あるジャンルに特化して学ばざるを得ないだけで」
 落書きしますよ、と言ってトーマスは余白に注釈を書き始めた。

 読みやすく、丁寧な美しい文字で。要点だけを的確に。


 彼の言った言葉の一つ一つの深さをアオイは噛み締めていた。

すべてを知るには時間がなさすぎるのだ。限られた時しか与えられていないからこそ人は焦るのだ。焦って争うのだ。

 もし永遠の時を手に入れたら人はどうなるのだろう。
 そこにあるのは怠惰だろうか。無気力であろうか。
 自身を律することなど不可能になるのではなかろうか。狂ってしまうのではなかろうか。

 
 人の命は短くはかない。それは種族としての限界。
 長寿が必ずしもめでたいことではないことではないのだ。


 トーマスは低くよく通る声で静かに話を続けていた。

 おだやかな雰囲気のこの男が何者なのかアオイは知らない。知る必要もない。 


 父代わりの男を救ってくれた親子。知っているのはそれだけ。



 目の前にある現実だけが真実。
 今、この一瞬一瞬がきらめき彼女の心の宝物として蓄積されてゆく。大切に胸にしまわれてゆく。






さて 実はできる男っぽいトーマス君。
まだまだ謎はいっぱいだぜ☆



「時空警察調査団」 第19回につづく!


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sugar(佐藤)です。最近お絵かきに目覚めました字書きです。ピクシブ始めました。http://pixiv.me/khronos442_satoh

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