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時空警察調査団9(修正版)

<前回までのあらすじ>


時空警察調査団に所属するトーマス(仮名)とナップル(仮名)。
旅の途中に知り合った小太りのコバ、彼の経営するキャバレーで
お目当ての美女とも出会い、メインキャラクターが勢ぞろいしたようです。

そうそう、今日から挿絵つきです。




 いっそのこと、ベッドに板でもひいて寝ようかしら。
 薄暗い部屋の中、貧乏性ナップルは考えた。
 いやいやそれでは天井の高さはごまかせない。板でこう、小屋というか箱をつくって……とまで考えてバカバカしさにため息をつく。
 だってフッカフカベッドはさすがに無理。絶対無理だもの!


 そう思っていたのに、思っていたのに! なんでいざ横になると気持ちいいのよ。



 コバホテルで採用されているのは、ただのフカフカベッドではないようだ。
 さすが大富豪で権力者のコバ。ベッドにも贅をこらしたこだわりがあるということか。さすが隙が無い。
「やだ眠れちゃうかもしれないー」
 クローゼットを開くと、寝巻きが2着、スリッパにガウンが用意されていた。
 1着は少しこぶり。ナップルにあわせていると思われる。
「やっぱ子供扱いされてる……」
 残りの1着は予備だろう。トーマスの部屋にも寝巻きはあるはずなので、これはナップルの分。試しに体に合わせてみたが、でかっ。


 寝間着をとりあえずはクローゼットに戻す。医療キットの入ったポシェットをブランケットの上に放り出してリビングへ戻る。
 トーマスが冷蔵庫から黄色い飲み物を取り出していた。柑橘系の香りがする。
「タ……タラッソミッソ? タラサミスタ(グレープフルーツ)のことかな。……お酒じゃないみたいだよ。ナップルちゃんもどうぞ」
 細長いボトルの栓をくるくるとほどき、振り向くことなくナップルに差し出す。
 返事もなければ受け取る様子も無いのを不審に思い、トーマスは冷蔵庫を閉めて立ち上がった。
 そこには少し不機嫌な女の子が立っていた。
「ベッド、フカフカだったの」
「そうか。眠れそう?」
「…………悔しいけどすごく気持ちよさそうだった」
 そう、とトーマスはニッコリ微笑んで飲み物を手渡した。


 セカンド・リビング。
 低いテーブルの上にはシャトルでトーマスが使っていた携帯用ゲーム機とともに、アナライザーがいくつか並んでいた。
 トーマスはそれを慣れた手つきで組み立て、薄い板状のコンピュータに仕上げる。


 この星の、この世界の情報を小さなコンピュータに集約する。彼の頭の中に直接集約すれば楽なのだが、本部や横に立っている少女ナップルには伝わらない。
"自分分以外の誰か"に伝えるにはどうしてもこういった外部装置が必要となる。
「全通信とここ数十年のできごとを集めるよ。それから」
 ナップルはトーマスの横にちょこんと座ってコンピュータをのぞき見た。
「ここ数十年の未来と」
 コンピュータは一瞬、青白い光を放つと



 何もない空間に無数の文字と画像を映し始めた。





 膨大な情報が間断なく表示され、保存されていく。
 元々が面倒くさがりなトーマスは後から再生するのが面倒くさいというだけの理由で、データが表示されるとともに記憶・分類していく。傍からみればただぼーっとホロスクリーンをながめているにすぎないが、膨大な情報が彼の頭脳に蓄積されてるのだ。極めて正確に。


 ふと隣の様子が変わったのに気づき、トーマスは思考と記憶を一時停止する。
「……ナップルちゃん?」
 画面をみるのに疲れたのか、今日1日で起こったことに疲れたのか、ナップルは半分眠っている。
「ナップルちゃん、眠いなら部屋にいくといいよ。あとは俺がやっとくから」
 少女はこくこくと頷くものの、それ以上動く気配はない。目はたまにうっすらと開くが基本は閉じている。本人は「起きています」アピールのつもりだろうが、どうみても寝ている。


「船を漕ぐってこういうことを言うんだよ」
 トーマスは苦笑してスクリーンをオフにし、ロックをかけてからナップルを抱き上げた。
 時空警察調査団メンバーとはいえ、彼女はまだほんの少女だ。成人男性に比べれば体力は著しく落ちる。
 機動隊員ほど体を作り変えられてはいないのだから。
「寝る子は育つっていうけどねー」
 そして器用に足でナップル部屋のドアを開け、フッカフカベッドに横たえる。
 枕の好みはわからないので、適当にボスボス叩いて4個並んでいるうちの一つを首に添える。




 ブランケットを肩までかけてやってから、トーマスはしばらくナップルの寝顔をながめていた。

 そうして。


 小さな頭をそっと撫で、おやすみ、と明かりを消した。




「しーちゃん。シードルニア・マデリーン!」
 リビングに戻ると、トーマスは誰もいないはずの空間で人の名を呼んだ。
「ポイント0.35から23。縦を……30。横は適当。こっちに送って」
 間髪を入れず、ロックしたはずのコンピュータが起動する。
 トーマスはしばらく画面上の文字乱流を眺めていたが、やがて静かに頷いて目を閉じた。



 パッと。
 本当にパッと目が覚めた。というか寝てたのかあたし!
 と、ナップルは焦った。気がついたらフッカフカベッドの上。おそらくはトーマスが連れてきてくれたのだろう。おそらくじゃないな、絶対だ。お調子者のくせに面倒見がいいのだあの男は。
「あーっ!」
 髪をくしゃくしゃにかき乱す。こんなんだからいつまでたっても子供扱いされるんだ。
 とりあえずクローゼットにあった寝巻きに着替える。さっき体に当ててみたとき、ズボンがなかったのを思い出す。シャツをすそを長くしただけの単純なものだ。これだと性別関係なく着用することができる。
 これでもネグリジェだと言い張ることができるのだろうか。
ベッドルーム

 リビングへ続くドアを開けてそっと様子を伺う。そろそろ夜も深い。トーマスは部屋へ戻って眠っているかもしれないが、まあ一応の確認の意味をこめて。
 しかし彼はまだ起きていた。
 窓のそばに立ってずっと外を眺めている。いつものぼーっとしているのほほんな彼ではない。


 ナップルには届かない、どこか遠くで
 彼女には決して近寄ることのできない何かを
 とてつもなく深いところで

 彼はたった一人でみつめているかのように。



 少し心に風が吹いた気がしたが、ナップルはそのまま音もたてずに扉を閉めた。




 翌朝、ナップルはノックの音で目が覚めた。
「ナップルちゃーん、ナップルちゃん! ごはんきたよ! すっごい豪華だよ!! 起きて!!」
 いつものトーマスだ。朝っぱらからご陽気だ。
 つか、ごはんが来たって何だよ。羽根でも生えてるのかよー。なんでご飯に自動詞がつくんだよー。
「あぁ?」
 とりあえずドアを開けるとそこには満面の笑みのトーマスが立っていた。
「見てごらんよ!!」
 ねぼけまなこのままナップルは手を引かれてセカンド・リビングを抜け、プライベートゾーン(ナップルたちには何がなにやらさっぱりなのだが、キッチンに一番近いリビングっぽい部屋の一つだ)へ入る。
 簡単にいえば食堂だ。

「おおお!」
 テーブルにあふれんばかりの皿と飲み物と食べ物! 中央には花まで飾ってある。
 なんなんだこれはー!
「ルームサービスだって。こんな豪華なの初めてみたよ。あったかい内に食べよう!」
「あー。っつーか着替えてくる。顔洗ってくるから」
「早くね! 早く!!」





集められるだけのデータと
「調査団」としての勘と。

歪みに変わった時空のゆらぎを修正するきっかけは
すぐそばに。



しかしそれはまだ、一見お気楽な男しか知らないこと。
まだね、まだ。




「時空警察調査団」 第10回につづくよ!


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sugar(佐藤)です。最近お絵かきに目覚めました字書きです。ピクシブ始めました。http://pixiv.me/khronos442_satoh

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