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時空警察調査団8(修正版)

<前回までのあらすじ>


時空警察調査団に所属するトーマス(仮名)とナップル(仮名)。
惑星「センティオン」の有名キャバレーに招待されました。
お相手してくれたのは青い髪の美しい女性。
なんだか二人ともドギマギしちゃったよ。



第8回


あらゆる時と空間を司る、絶対者。
時空警察。


時空のゆらぎの中に生きるものたち。
丁寧にやさしく、ゆらぎが歪みと化さぬように。

全宇宙がおだやかに過ぎることを願って。






 二人に用意されていた部屋は、コバ・ヤシマル近くのホテルだった。コバ系列らしく、外観からして派手そのものだった。金とクリスタルのシャンデリア、丁寧に加工され彫刻が施された円柱。ドアマンに案内され高速エレベータで上層階へ向かう。この段階で仮の親子はまたも緊張感で筋肉をこわばらせていた。
 扉をあけると以外にも上等だが小ぢんまりした部屋が見えた。セミスイートしか空いていなかったのが本当に申し訳ないとコバは言っていたが、このことか。スイートではなく個室じゃないか、その方が落ち着く……と、ナップルは胸をなでおろした。
 そして期待は裏切られた。
 ドアマンの案内は終わっていなかった。絨毯の敷かれた床をずんずん進み壁をちょいと触るとスッと景色が変わった。壁が消えたのだ。
「どうぞ」
 先へ進むよう促す。
 そろそろとナップルとトーマスの二人は消えた壁の向こうへ足を踏み入れた。
「うわぁ……」
 ちょっとまって、さっきのは何、玄関なの? とナップルはキョロキョロあたふたと挙動不審に陥っていた。
 そこは広い広いリビング。ふかふかソファに厚みある天然木1枚板で作られたピカピカテーブル。
 窓にかかっているのは全面刺繍のカーテン。猫足キャビネットの上には花瓶。

 リビングを抜けるとベッドルームが二つ、バスルームが二つ。さっきよりは小さめ、セカンドリビングと簡単なキッチン。なんだこの貴賓室。天井も高い。すごく高い。自分の身長がが半分に気がする。
 冷暖房のエネルギーが余分にかかるじゃないか、とかいらぬことを考えてしまう。
 ぼけーっと立ち尽くす二人に、ドアマンは会釈して出ていった。


 キャバレーにて夜も更け、お子様はお休みの時間。コバがホテルに部屋を用意しました、と連れてこられた。一度は断ったのだ。コバ・ホテルならばきっとド派手で落ち着かないのにきまっている。荒野で野宿やコンクリートや岩の上で眠るなんぞ慣したれたものだが、どこのお貴族様だという扱いは苦手すぎる。しかしコバが泣きそうな顔をするので、つい言葉に甘えてみれば結局この有様。

「なんていうか、結局わたしたちって貧乏性なんだよねえ」

 二人してため息をつく。通常空間からすれば神のような存在、といっても過言ではない時空警察ではあるが、皆出身は当の通常空間だ。もちろん神出身のメンバーもいれば一般ヒューマノイドも昆虫族や水棲族もいる。出自は様々だ。
 だがこの二人は普段から特に質素な生活を好むタイプで、警察学校の校長からは「ジミー」と呼ばれている。


「俺、リビングで寝よう」「あ、ずるーい!」「お嬢さんはフカフカベッドで眠りたまえ」「落ち着かんわ!」
 しかし結局はセカンドリビングでも広すぎるほど広く、ソファもフッカフカなことに気づき、トーマスは何もかもあきらめることにした。

 そのソファに二人して腰掛け、どちらからともなく話しかける。
「で……どうする?」

 『時空のゆらぎ』根源はコバであり、場所はコバ・ヤシマル周辺であることは二人の持つ『感覚』でわかる。
 あとはコバとコバ・ヤシマルが具体的にはどのように影響を与えているか、また何をどうすれば歪みと化したゆらぎを元に戻すことができるか、精査する必要がある。機動隊派遣を要請するのはそれからだ。
「もう少し調べてみないことにはなぁ。少なくとも人物と場所は特定できたわけだし。あそこで間違いないはずだよ。本部はシミュレーションを始めているだろうけど。さっさと結果でるといいねえ」



 トーマスが両手を頭の後ろに組んだ。遠い目をしている。
 ナップルは冷蔵庫(金ぴか!)をあけて緑色のボトルに入った水らしきものを取り出した。
「あんたも飲む?」
「うん、ありがとう……ってうわ!」
 目の前に飛んできたビンをあわててキャッチする。
「ナップルちゃん! 炭酸だったらどうするの! バーンってなる、シュワシュワってなるってば」
「人のことなど知らぬわ」
 冷たい娘だ、とトーマスはぶつくさ言っているがお構いナシだ。ボトルの中身は残念ながらただの水でシュワシュワではなかった。惜しい。
 トーマスはボトルの水を少し口に含み、また遠い目をした。
 本部はコバを中心に何パターンものシミュレーションを行い『未来』を導き出すだろう。その数は数万、数億を超える。どのパターンを踏めば歪みが時空に吸収される程度のゆらぎに変化するのか。
 絶対に間違いは犯すことができない、極めて重要かつ繊細な事項だ。

 
 それが極めて単純なものなら機動隊を出動させることなく、調査団自体が収束させることもある。例えば横断歩道を渡るのを数秒遅らせる、試験の問題と答えをこっそり教える、本人の人生を変える一言を告げる、などはそれほど手間のかかることではないわけで。調査ついでにちょこっと寄り道すればいいだけのこと。
 ややこしくなりそうな事案であったり、多少の技術が必要であったりすれば調査団は手を出さない。他に調査しなければならない事項は山積している。そのあたりしっかり分業なのだ。


「……なんか気になることでもあるの?」
 黙りこんだままのトーマスにナップルが声をかけた。
「あ、いや」
 どこか別の世界に行っていたトーマスが戻ってきた。
 ナップルはソファではなくカーペットに直座りをしていた。この方がテーブルに向かいやすいのだ。
「なんかさ……」
「うん」
「おケイちゃんに会えなかった」
「あ?」
「こないだ飲みにさそったら、にっこりと断られた」
「……」

 何を言い出すんだこいつは。今、それ関係あるか!?
 ちなみにおケイちゃんというのは時空警察機動隊チーム『エンブリオ』の隊員である。おひさまのように輝く長い髪の美女だ。
「エンブリオのボスも来るよーって言ったのに断られた」
「!!」
「チェリーも来るからって言ったからかなあ」
「!!!」


 ちょっとまて。貴様今なんつった。


 機動隊のボスと警察学校の校長とか言わなかったか。


「ちゃんと他にも何人か珍しく集まるからーって言ったのに」
 おま、お前どういうメンバーで集まってるんだ。呼び出しとかじゃないのか、なんだそれ!
 ぶっちゃけ機動隊のチームボスだとか校長とかなんだかんだいっても雲の上の人たちじゃないか。
 どどどどうして、なんで知り合いなんだ、まさかと思うが友達扱いしてないか?
「な、なんなのよそのメンバー」
「えー、友達だよー」
「ボスとか言わなかったか」
「言ったよ? どしたの?」
 平然とトーマスが言い放つものだからナップルは鳥肌が立った。恐れ多いにもほどがある!
 ボスクラスの方々が我々のような下っ端とおおいおおいおおい!
「そ、そ、そんな人たちと何だってあんたみたいな吹けば飛ぶような軽い男がなんでちょっとそんなあんた」
「ナップルちゃんなにプルプルしてんのさ。俺、友達多いほうだよ? 今更何を。それにナップルちゃんが俺のことそんな風に思っていたなんてちょっとショック」
 しょんぼりトーマス。何なんだこの男は!

「おケイちゃんってなかなか会ってくれないからさあ、この前もその前も機動隊にエンブリオ推薦したんだぜ? そしたら仕事上の付き合いでで会えるかなと思ったのに全然なんだぜー」

 もう何を言っていいのやら。口を尖らせるトーマスを複雑な気持ちで見つめる。

「……トーマス君とやら」
「なんだい」
「エンブリオ招聘しても、あたしたちが調査して帰還するのと入れ違いに派遣されんだよ。ゼッタイすれ違いなんだから100%会えないよ。むしろ他の機動隊を推……」「ああああああ!」
 トーマスは叫んだ。
「気づかなかった!!!」

 ……やっぱバカだろ、こいつ。






豪奢な家具に囲まれて、仮の親子は大騒ぎ。

にぎやかにはしゃぐ男はその裏で何かを考えている。
何かを感じている。


笑顔を絶やさぬものほど、深淵をかかえているものだ。

最も、時空警察に入ろうなんて奇特なヤツは誰でもそんなもんだけどね。





「時空警察調査団」 第9回につづくよ!

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sugar(佐藤)です。最近お絵かきに目覚めました字書きです。ピクシブ始めました。http://pixiv.me/khronos442_satoh

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